妊婦加算が再開!?妊娠・出産時に活用したい公的補助制度について

妊婦加算が再開!?妊娠・出産時に活用したい公的補助制度について

2018年度に導入され、2019年1月に凍結していた妊婦加算が2020年度から再開する見通しとなりました。妊娠中は医療機関にかかることが多く、これから妊娠・出産を希望する女性は妊娠や出産にかかる出費が心配ですよね。今回は妊婦加算の概要と妊娠・出産時に活用したい公的補助制度について解説します。

妊婦加算とは

妊婦加算とは、妊婦が医療機関を受診したときに診療報酬に上乗せされる制度のことです。妊娠中は母体や胎児の安全のため、通常より慎重な診察や投薬が必要になります。

例えば、厚生労働省の公表した資料(※)によると、妊娠中は尿路感染症や消化器症状の頻度が高くなることが指摘されており、投薬の際には胎児に影響を及ぼさないかを考慮して処方しなくてはいけません。

妊婦を診察するときは、医師に妊婦治療の知識やスキルが求められ、医療機関によっては風邪でも産婦人科にかかるようすすめるケースもあるほどです。

こうした懸念から、妊婦加算を新設して医師に特別手当を支給することで積極的に診察できるよう体制を整えました。

妊婦加算導入後の自己負担額

2018年度からスタートした妊婦加算では、初診料や再診料などが上乗せされました。

医療費の自己負担額が3割の方だと、診療時間内に外来で医療機関を受診すると初診料は230円、再診料は110円の負担増となりました。診療時間外や休日に受診すると初診料350円、再診料210円になり、深夜受診だと初診料650円、再診料510円にアップします(※)。

妊婦加算は、通常の妊婦健診だけなら加算対象外ですが、妊娠に直接関係しない傷病の治療でも加算対象となります。

2019年に凍結した背景

妊婦課税がスタートしてから、SNSでは制度を知らなかった人や納得がいかないという人が妊婦加算について投稿しはじめ、話題となりました。妊娠とは直接関係のない皮膚科の受診やコンタクトレンズの処方でも加算され、妊婦の医療費負担が大きくなってしまったことが原因です。なかには「妊婦税だ」「少子化を加速させる」などといった否定的な意見も出ました。

新聞やテレビなどのメディアでも取り上げられるようになり、ついに厚生労働省の中央社会保険医療協議会は2019年1月1日から当面の間、妊婦加算を凍結することを発表しました。

2020年度から再開を発表

2019年1月から廃止されていた妊婦加算ですが、厚生労働省の有識者会議は2020年度から再開の見通しであることを公表しました。妊婦を診察しただけで加算する形での再開は適切ではないと判断したものの、単純な料金の上乗せは必要と判断したためです。

上乗せされる要件や患者の負担額などは検討中で、2018年度の妊婦加算とは仕組みが変わる可能性があります。妊婦加算という名称もよくないという指摘があり、名称についても協議中です。

出産時の出費を抑えるために活用したい公的補助制度
妊娠・出産時は妊婦健診費用や出産費用などの医療費だけではなく、マタニティ用品や出産準備用品など、なにかと出費がかさみます。できるだけ支出を抑えるために、活用できる公的補助制度を把握しておきましょう。

出産育児一時金

妊娠4か月(85日)以上で出産した場合、1児につき42万円支給される制度です(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)。健診費、分娩・入院費などにあてることができ、病院に直接支払われる「直接支払制度」もあります。

出産手当金

出産のため会社を休んでいる間、会社から給与が支払われない場合に健康保険制度から支給されるお金です。産休1日につき標準報酬日額の3分の2の手当金が支給されます。ただし、自営業者などが加入している国民健康保険制度は対象外です。

高額療養費制度

その月の1日から末日までの間に支払った医療費が自己負担上限額を超えた場合、超過分の金額が支給される制度です。自己負担額の上限は年齢や収入によって計算方法が異なります。自然分娩は対象外ですが、帝王切開や吸引分娩など公的医療保険が適用される治療については対象です。

高額療養費制度は、妊娠・出産時だけではなく通常の病気やケガなど医療費が3割負担となる治療についても対象となるので、今後のためにも覚えておきましょう。

高額医療費控除

1月から12月までの1年間に支払った医療費が10万円(所得金額が200万円未満の方は所得金額等の5%の額)を超えた場合、医療費を所得から差し引いて申告することで所得税などが軽減される制度です。

妊娠中の検診や出産費用、流産したときの手術・入院費用なども対象になります。会社員の場合は、年末調整時ではなく別途確定申告をしなくてはいけません。

最後に

2019年に凍結されていた妊婦加算は2020年度から再開の見通しとなりました。妊婦の負担額については検討中ですが、凍結になった背景を踏まえて協議してほしいですよね。妊娠・出産では、妊婦検診や出産費用など支出が増えます。これから妊娠・出産を考えている女性は公的補助制度を理解して積極的に活用しましょう。

【参考URL】
※<参考>妊婦加算の概要 – 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000460129.pdf